会派視察報告(福岡市・熊本市・鹿児島市)

会派視察報告

日 程  平成22年1月19日(火)~21(木)

視察先:

1.福岡市 「市立2病院の地方独立行政法人化」

2.熊本市 (1)「家庭ごみの有料化」、 (2)「熊本城整備復元計画」

3.鹿児島市 「かごしま環境未来館」

報告事項

1.福岡市 「市立2病院の地方独立行政法人化」

(視察の目的)

福岡市には「こども病院・感染症センター」と「市民病院」の2つの市立病院がある。この経営形態を22年4月から地方独立行政法人「福岡市立病院機構」に移管することになっており、計画どおり事業を進めている。浜松市では当初計画の22年4月からの移管については困難な状況だが、彼我の比較をすべく調査した。

(福岡市の状況)

「こども病院」は昭和55年に開院(214床)。一般的に小児専門病院は都道府県の設置で、市単位で持っているところは珍しい。福岡市においても、外来患者の43%、入院患者の53%は市外からの利用者である。しかし役割の重要性から市で運営し、市税の投入を行っている。「市民病院」は平成元年に旧「第一病院」を移転開院した総合病院である(200床)。

平成20年6月に、今後の病院のあり方について「福岡市病院事業運営審議会」の答申を受け、市として21年3月に「経営改革プラン」を策定、地方独法移管の方針を立てた。

福岡市「病院事業会計」は、平成19年度は、一般会計から13.6億円を繰り入れしながら、7億円の欠損を出している。また累積欠損金は47億円となっている。

(移管の取り組み)

★平成20年度

独法への移管については、平成20年度までは浜松市と同じようなスケジュールで進めており、21年2月議会で「定款」、「評価委員会条例の制定」を議決した。

★平成21年度

①中期目標と中期計画

平成21年度に入り、「設立準備委員会」を設置(独法移管後は理事会となる)、開設準備を進めている。並行して市の付属機関としての「評価委員会」を設置し、「中期目標(案)」を検討している。なお中期目標は当面3年の目標を立て、22年2月議会に提案予定である。「中期目標」議決後、独法は22.4の設立を受け、速やかに「中期計画(案)」を議会に提案予定である。

②人事等

事務部門など一部を除き、職員は独法移管後に身分切り替えとなることから、12月議会に「職員引継条例」を議決した。また職員への説明会を4月から4回開催するとともに、毎月職員向け広報紙を発行している。新たな人事評価制度について現在検討中とのこと。なお独法プロパー職員となる22.4入社の看護師を100人採用している。

③財産継承

関係者間の協議で継承財産の範囲を検討し、時価評価を行い、12月議会で議決した。退職給付引当金は37億円が必要となるが、資産は時価評価と負債の差益があり、開始貸借対照表の作成にあたり、浜松市のように追加での資本注入は必要ない。

④経営改善

経営健全化策は「病院改革プラン」に基づいて検討しているが、具体的な取り組みは独法移管後となる。

⑤総務省認可

独法認可申請は移管2か月前までとなっており、2月中に申請予定とのこと。

(浜松市との比較)

移管に関して、職員の身分切り替え以外は浜松市とほぼ同じようなスケジュールで手続きを行っている。上記のポイントのうち、④は、浜松市では独法移管前の今年度から医療公社で経営健全化を進めている点について評価できる。

一方、浜松市では③が大きな課題となっており、退職金の44億円に加え、資産と負債の差損22億円と、2か月分のキャッシュフローに相当する資本金約20億円をいかに捻出するかが最大のテーマ。一般財源が基本となるが、「第3セクター等改革推進債」の活用範囲についても研究したい。

2.熊本市

(1)家庭ごみの有料化

(視察の目的)

浜松市では「一般廃棄物処理基本計画」を策定し、旧12市町村で異なっていた制度の見直しや統一を進めており、その中で「家庭ごみの有料化」について今後検証を進めるとしている。

熊本市では、一度、議会で否決された有料化案を、2年以上の時間をかけて再提案し、平成21年10月から導入しているが、浜松市における今後の議論の参考に資するため調査した。

(有料化までの経過)

平成16年3月に「熊本市ごみ減量・リサイクル推進基本計画」を策定し、平成22年度までの計画を策定。この中で目標値を「家庭ごみ20%削減」とし、具体的施策のひとつとして「有料化」を計画した。

平成17年1月から8月までの8カ月間に390回の「有料化に関する市民説明会」を開催(参加12,489人)。その後、平成17年11月と平成18年1月にパブリックコメントを実施し(意見数446件)、平成18年3月議会に有料化の条例を提案した。

議会は、「有料化の前に啓発活動を行うべき」とし、これを否決した。

これを受け市は、平成18年度から19年度にかけて、701回の「ごみ減量説明会」を開催した(24,371人)。しかし減量率は5.6%と目標にはほど遠く、平成20年3月に、あらためて有料化の方針を表明した。

20年4月から10月に、「ごみ減量説明会(99回3,765人)」を開催すると同時に、「有料化説明会(21回1,370人)」を開催、10月にあらためてパブコメも実施した(201件)。

20年12月議会に再度提案し、ごみ袋の料金を当初の2割減として可決した。

可決後も21年10月からの導入に向け、21年2月から9月までに、さらに市民説明会を開催(1,175回40,819人)し、ごみステーションでの啓発活動や広報活動を継続し、実施に至った。

都合、2000回を超える市民への説明会を開催するなど、市の啓発活動の努力は相当なものといえる。

(現状)

導入後の1日当たりごみ量は、10月から12月の3カ月平均で、燃やすごみ84.3%、埋立ごみで55.6%となっている。ただし有料化直前の9月に“かけこみ”ごみ出しもあったとのこと。また指定袋の利用率は、10月後半には98-99%となるなど制度の定着が進んでいるようだ。逆を言えば1-2%の “ルール違反”はあるということだが、懸念された不法投棄はほとんど無いとのことであった。

なお、ごみ袋の料金は、45ℓ35円、30ℓ23円、15ℓ12円5ℓ4円となっており、10枚1セットで販売している。週2回ごみ収集があるので、世帯当たりの負担額は月300円程度とみられている。

有料化による手数料収入は約8億円程度を見込んでおり、袋作成コストが約5億円、残りの3億円余をごみ減量・リサイクル事業に充てるとしている。

(浜松市との比較)

浜松市では浜北区(旧浜北市)で、合併前から有料化を実施するなど、公平性の観点からも制度の見直しが不可欠である。また制度見直しの一環として、22年4月から旧浜松市では「レジ袋の使用禁止」を行う予定であるが、丁寧な説明をしないまま制度変更することに対し、市民の抵抗も多く、熊本市のような対応は非常に参考になる。

(備考)

現在、家庭ごみの有料化は、政令市では18市中7市が導入しており、札幌市が45ℓ80円と最も高く、新潟市や京都市では同45円、仙台市や岡山市で同40円等となっている。

(2)熊本城復元整備計画

(視察の目的)

熊本城は平成9年度に「復元整備計画」を策定し、Ⅰ期(短期)、Ⅱ期(中期)、Ⅲ期(長期)の整備を進め、現在では年間200万人を超える来場者を集めるとともに、合わせて募金活動や市民債も積極的に活用している。会派では「浜松城エリアを浜松市のセントラルパークと位置づけ再生を図るべき」と考え、これまでも提案型の質問などを行ってきているが、今後の施策に資するため調査した。

(復元整備計画の概要)

「こども病院」は昭和55年に開院(214床)。一般的に小児専門病院は都道府県の設置で、市単位で持っているところは珍しい。福岡市においても、外来患者の43%、入院患者の53%は市外からの利用者である。しかし役割の重要性から市で運営し、市税の投入を行っている。「市民病院」は平成元年に旧「第一病院」を移転開院した総合病院である(200床)。

平成20年6月に、今後の病院のあり方について「福岡市病院事業運営審議会」の答申を受け、市として21年3月に「経営改革プラン」を策定、地方独法移管の方針を立てた。

福岡市「病院事業会計」は、平成19年度は、一般会計から13.6億円を繰り入れしながら、7億円の欠損を出している。また累積欠損金は47億円となっている。

(移管の取り組み)

★平成20年度

独法への移管については、平成20年度までは浜松市と同じようなスケジュールで進めており、21年2月議会で「定款」、「評価委員会条例の制定」を議決した。

★平成21年度

①中期目標と中期計画

平成21年度に入り、「設立準備委員会」を設置(独法移管後は理事会となる)、開設準備を進めている。並行して市の付属機関としての「評価委員会」を設置し、「中期目標(案)」を検討している。なお中期目標は当面3年の目標を立て、22年2月議会に提案予定である。「中期目標」議決後、独法は22.4の設立を受け、速やかに「中期計画(案)」を議会に提案予定である。

②人事等

事務部門など一部を除き、職員は独法移管後に身分切り替えとなることから、12月議会に「職員引継条例」を議決した。また職員への説明会を4月から4回開催するとともに、毎月職員向け広報紙を発行している。新たな人事評価制度について現在検討中とのこと。なお独法プロパー職員となる22.4入社の看護師を100人採用している。

③財産継承

関係者間の協議で継承財産の範囲を検討し、時価評価を行い、12月議会で議決した。退職給付引当金は37億円が必要となるが、資産は時価評価と負債の差益があり、開始貸借対照表の作成にあたり、浜松市のように追加での資本注入は必要ない。

④経営改善

経営健全化策は「病院改革プラン」に基づいて検討しているが、具体的な取り組みは独法移管後となる。

⑤総務省認可

独法認可申請は移管2か月前までとなっており、2月中に申請予定とのこと。

(浜松市との比較)

移管に関して、職員の身分切り替え以外は浜松市とほぼ同じようなスケジュールで手続きを行っている。上記のポイントのうち、④は、浜松市では独法移管前の今年度から医療公社で経営健全化を進めている点について評価できる。

一方、浜松市では③が大きな課題となっており、退職金の44億円に加え、資産と負債の差損22億円と、2か月分のキャッシュフローに相当する資本金約20億円をいかに捻出するかが最大のテーマ。一般財源が基本となるが、「第3セクター等改革推進債」の活用範囲についても研究したい。

2.熊本市

(1)家庭ごみの有料化

(視察の目的)

浜松市では「一般廃棄物処理基本計画」を策定し、旧12市町村で異なっていた制度の見直しや統一を進めており、その中で「家庭ごみの有料化」について今後検証を進めるとしている。

熊本市では、一度、議会で否決された有料化案を、2年以上の時間をかけて再提案し、平成21年10月から導入しているが、浜松市における今後の議論の参考に資するため調査した。

(有料化までの経過)

平成16年3月に「熊本市ごみ減量・リサイクル推進基本計画」を策定し、平成22年度までの計画を策定。この中で目標値を「家庭ごみ20%削減」とし、具体的施策のひとつとして「有料化」を計画した。

平成17年1月から8月までの8カ月間に390回の「有料化に関する市民説明会」を開催(参加12,489人)。その後、平成17年11月と平成18年1月にパブリックコメントを実施し(意見数446件)、平成18年3月議会に有料化の条例を提案した。

議会は、「有料化の前に啓発活動を行うべき」とし、これを否決した。

これを受け市は、平成18年度から19年度にかけて、701回の「ごみ減量説明会」を開催した(24,371人)。しかし減量率は5.6%と目標にはほど遠く、平成20年3月に、あらためて有料化の方針を表明した。

20年4月から10月に、「ごみ減量説明会(99回3,765人)」を開催すると同時に、「有料化説明会(21回1,370人)」を開催、10月にあらためてパブコメも実施した(201件)。

20年12月議会に再度提案し、ごみ袋の料金を当初の2割減として可決した。

可決後も21年10月からの導入に向け、21年2月から9月までに、さらに市民説明会を開催(1,175回40,819人)し、ごみステーションでの啓発活動や広報活動を継続し、実施に至った。

都合、2000回を超える市民への説明会を開催するなど、市の啓発活動の努力は相当なものといえる。

(現状)

導入後の1日当たりごみ量は、10月から12月の3カ月平均で、燃やすごみ84.3%、埋立ごみで55.6%となっている。ただし有料化直前の9月に“かけこみ”ごみ出しもあったとのこと。また指定袋の利用率は、10月後半には98-99%となるなど制度の定着が進んでいるようだ。逆を言えば1-2%の “ルール違反”はあるということだが、懸念された不法投棄はほとんど無いとのことであった。

なお、ごみ袋の料金は、45ℓ35円、30ℓ23円、15ℓ12円5ℓ4円となっており、10枚1セットで販売している。週2回ごみ収集があるので、世帯当たりの負担額は月300円程度とみられている。

有料化による手数料収入は約8億円程度を見込んでおり、袋作成コストが約5億円、残りの3億円余をごみ減量・リサイクル事業に充てるとしている。

(浜松市との比較)

浜松市では浜北区(旧浜北市)で、合併前から有料化を実施するなど、公平性の観点からも制度の見直しが不可欠である。また制度見直しの一環として、22年4月から旧浜松市では「レジ袋の使用禁止」を行う予定であるが、丁寧な説明をしないまま制度変更することに対し、市民の抵抗も多く、熊本市のような対応は非常に参考になる。

(備考)

現在、家庭ごみの有料化は、政令市では18市中7市が導入しており、札幌市が45ℓ80円と最も高く、新潟市や京都市では同45円、仙台市や岡山市で同40円等となっている。

(2)熊本城復元整備計画

(視察の目的)

熊本城は平成9年度に「復元整備計画」を策定し、Ⅰ期(短期)、Ⅱ期(中期)、Ⅲ期(長期)の整備を進め、現在では年間200万人を超える来場者を集めるとともに、合わせて募金活動や市民債も積極的に活用している。会派では「浜松城エリアを浜松市のセントラルパークと位置づけ再生を図るべき」と考え、これまでも提案型の質問などを行ってきているが、今後の施策に資するため調査した。

(復元整備計画の概要)

平成10年にワークショップを立ち上げ構想に着手。平成12年に策定した「環境基本計画」の中で、施設の建設について触れ、平成16年度に基本計画を策定。用地費22億円+施設工事費20億円で約42億円をかけて平成20年10月にオープンした。

施設は2階建てで、2階部分は多目的ホールや研修室で使用料が必要。メインは1階部分で、入館は無料。展示学習ゾーンの他、リサイクルショップ、リサイクル工房などがある。屋根部分は芝生化されている。

年間の維持費は光熱水費用が約3000万円。職員7人と嘱託スタッフ19人で運営されている。

(施設運営)

施設を利用したイベントや講座は、ほぼ毎日行われており、年間300講座程度実施したとのこと。講師は大学関係者や環境団体などで、一般利用の他、小中高校生や地域団体、PTAなどさまざまな団体の利用がある。

環境学習の他、人材育成に力を入れており、「環境カレッジ」を開設、「環境の匠(たくみ)」を育成し、卒業した市民から講座の講師も誕生している。

展示学習ゾーンは広く、随所に工夫がみられ充実している。こどもの年代に応じて、環境やリサイクルの推進などを強く印象づけられるようになっている。

リサイクルショップは現金でなく「ポイント」での取引としている。持ち込みにより得たポイントでリサイクルグッズを引き取るしくみだが、持ち込みが多く、リサイクルグッズが増える一方とのこと。

なお、オープンの20年10月10日に合わせて、鹿児島市は「環境都市宣言」を行っている。

以上